2006.12.3
障害を持った新郎新婦というのは初めてではないけれど、
さすがに両目がまったく見えない花嫁さんの撮影というのは初めての経験で・・・
事前打ち合わせをするにしても、なんせ写真というビジュアルな分野での話し合いなワケだから
新郎新婦とのコミュニケーションをとるのにも限度がある。
だったら、今回は間に入ってるプロデュース会社に事前連絡のすべてをお任せしようということになり
私は当日の撮影をぶっつけ本番で引き受けさせていただきました。
新婦は、生まれつき右目だけが失明していたのですが
左ひとつで目を酷使したせいか
高校時代に左目も完全に見えなくなってしまったそうです。
多感な時期に、今までかろうじて目の前にあったすべてのものが暗闇に包まれる・・・
五体満足であることになんの疑問も持たず生きてきた私からは
きっと、彼女自ら想像を絶する悲しい運命を乗り越えてきたんだろうなということぐらいまでしか
思いつきません。
これ以上は、語れませんよね。
そんな運命を必死に生き抜いて、
彼女は今日、最高の幸せをかたちにすることができました。
しかも、お腹に小さな命を宿して。
横浜・みなとみらいの観覧車がキレイに見えるホテルのレストランで、
まったく飾り気のない会議室のような個室を借り切っての人前式と披露宴。
「障害を持った人は強くて前向きで明るい」とよく言いますが、
この日の結婚式がまさにそうでした。
私が
「どう声をかけて、どうやって写真を撮ればいいのだろう」
なんて気にしていたのが恥ずかしくなるほど、
新婦も同じ障害を持つお友達もまったく普段通りで、健常者と変わらない勢いで、
「ほんとうに視界が見えてないのかな?」と疑問に思うくらい
大いに笑って、たくさんお酒も飲んでました。
「写真撮ってくださ~い!」なんて、普通に声かけられるしね(笑)
物理的には、お互いにお互いのことは見えてないけれど
触れ合えばすべてが分かる。
今日の花嫁である親友が、どんな風に着飾って、どんなメイクをして、
どんなに彼女が輝いているか。
こんなひとつひとつの何気ないシーンを撮るときですら、
私はあふれ出てくる涙を一生懸命自分の中に引っ込ませながら
残念ながら出席してもらえなかった新郎のご両親に見てもらって2人のことを絶対に祝福してもらうんだ、
そして数ヶ月後に生まれ来る赤ちゃんにこの写真見せてあげるんだ、
という思いでいっぱいになりながらシャッターを切り続けました。
お部屋から一望できるみなとみらいの夜景はそりゃーステキだったけど、
そんなの単なる「新郎新婦を飾る脇役」にしかなってなかったぐらい
今日の2人は幸せいっぱいに輝いてましたね。
2人の手元に渡った300枚の写真、
平面の写真を手に取ってみても画像は分からないけど
きっと彼女なら、「心の目」で私の写真を感じてくれるはず・・・だといいな(笑)